概要

危機管理センター長
小松和人
危機管理センターは医療の質の向上及び安全な医療の提供を行う医療安全推進室、病院に関わるすべての人々を医療関連感染から守ることを目的とする感染管理室、災害時における医療救護を統括する災害救護支援室の3室を統括するセンターとして設置されています。
業務紹介
医療安全推進室
医療安全推進室の紹介
福井赤十字病院医療安全推進室は2003年4月に設置され、医療の質の向上及び安全な医療の提供を目指し、医療安全推進活動を行っています。
安全管理のための基本的考え方(医療に係る安全管理のための指針より)
- 患者さんの安全を守ることを最優先に考え行動します。
- 患者さんと職員のより良いパートナーシップを築き、安全で質の高い患者参加型の医療を提供します。
- 部署間、職種間で迅速な連携を図り、良好なコミュニケーションを構築します。
医療安全推進室員
- 医師2名
- 看護師(医療安全管理者)1名
- 薬剤師1名
- 臨床検査技師1名
- 臨床工学技士(医療機器安全管理責任者)1名
- 理学療法士1名
- 管理栄養士1名
- 診療放射線技師1名
- 事務職員3名
医療安全推進室の主な活動内容
- 医療安全に関する現場の実態調査及び業務改善の提言
- 医療事故並びにインシデントの収集、分析、対策立案
- 医療安全管理委員会(毎月1回)への情報提供
- 医療の安全管理に係る教育・研修事業の企画及び運営
- 医療安全に関する院内ラウンド
- 各部署における医療安全管理に関する相談、助言
- 相談窓口にて医療安全に関する相談の対応
医療安全推進室の主な取り組み
患者誤認防止
患者間違いによる医療事故防止のため、病院全体で患者誤認防止活動に取り組んでいます。患者さんには何度もフルネームでお名前をお聞きしますが、ご協力をお願いします。
転倒・転落防止
病院では住み慣れた家庭の環境と違うため、思いがけない転倒・転落事故が起こることがあります。当院では入院生活が安全でより快適に過ごせるように患者さんの転倒・転落の危険度を評価し、転倒・転落の危険性がある場合には、危険度に合わせたハートマークの札をベッドサイドにかけ、患者さんが移動する時には車椅子などに付けて、患者さんとともに移動します。このハートマークは病院内のどのスタッフが見てもわかるようになっており、危険度を意識したサポートを行っています。
患者さんや家族の方にも転倒・転落事故を防ぐためにご協力をお願いします。

ハートマーク使用例
感染管理室
感染管理室の紹介
2010年4月に感染防止対策室として設置され、2017年4月に感染管理室と名称変更となり、福井赤十字病院におけるすべての感染症の院内外あるいは国内外における感染防止対策を積極的に推進しています。感染管理室長は病院長から感染管理に関する権限を委譲され、感染管理室の責任者として感染対策の総括的役割を果たしています。なお、感染管理室は医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師・事務で構成されています。
院内感染防止対策のために(院内感染対策指針)
1)院内感染対策に関する基本的考え方
(1)病院内は感染が成立するために必要な感染源、感染経路、被感染者(宿主)が集合している場所である。このような環境にあって感染を防ぐために、病院にかかわる全ての人々(職員、患者、家族、学生、ボランティア、外注業者等)を対象とし、感染源、感染経路、宿主の3者について感染管理室を中心に組織的に感染対策に取り組む。
(2)感染防止及び感染拡大防止に関する正しい知識の理解と技術向上のために研修会等を開催し、感染対策に必要な情報を職員が得ることができる環境を整備する。
(3)感染対策は自院だけではなく地域で連携する施設と共に取り組むことが重要であり、地域内でネットワークを構築し、感染対策に取り組む。
(4)赤十字ネットワークを活用し、院内外や国内外における感染対策(感染症に対する抗菌剤の適正使用を含む)にも取り組む。
2)院内感染対策のための委員会その他医療機関内の組織に関する基本的事項
(1)感染管理室を中心に、院内感染対策チーム(Infection Control Team)及びリンクナースが連携しながら院内感染防止の徹底及び職員の教育指導等を行う。
(2)抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team)は抗菌薬の適正使用支援、教育および感染症治療体系の構築等を行う。
(3)病院内での取り決めについては、院内感染防止対策委員会へ諮問し、決定する。
(4)必要に応じ院内の衛生委員会、医療廃棄物処理対策委員会、各担当事務部門との連携により感染対策を行う。
3)院内感染対策のために従業者に対して行われる研修に関する基本方針
全職員に対して感染症とその予防対策について、継続的に教育することが大切であるため、年2回以上の職員研修を開催する。また、新規採用職員に対し、採用時のオリエンテーションの際に、院内感染対策についての研修を行う。
4)感染症の発生状況の報告に関する基本方針
院内において感染症が発生した場合には、院内感染管理マニュアルの発生届出の手順に従い感染症の種類に応じ報告する。
報告の意義
- 感染の拡大防止
- 感染症の動向の把握
- 感染防止対策の立案・指導・改善
- 発生原因の調査・分析
5)院内感染発生時の対応に関する基本方針
院内感染が発生したときには迅速に対応し、院内感染が広がることを防ぐよう情報の収集と追跡調査、感染対策の指導などを行う。
必要に応じ、緊急に対策会議を開催することが出来る。この場合は、院内感染防止対策委員長が、適宜人選し召集する。
6)患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
本指針は、患者及びその家族からの閲覧の求めがあった場合はこれに応ずる。
7)その他の医療機関内における院内感染対策の推進のために必要な基本方針
病院で働く職員の健康管理は院内感染対策として重要である。患者から職員、職員から患者への感染の低減に努める。
- 職員の感染管理(麻疹・水痘・風疹・流行性耳下腺炎・流行性角結膜炎・インフルエンザなど)
- EBM(evidence based medicine)に基づいた院内感染防止対策マニュアルの作成と改定
- 院内抗菌薬使用ガイドラインの作成
- 各種サーベイランスの実施と結果の現場へのフィードバック
- 針刺し事故(HBV、HCV、HIV)対策の実施(エピネット報告書の推進、血液曝露防止対策の実施と検討、曝露後の対応)
感染管理室の主な活動内容

抗菌薬ラウンド
- 疫学的な知識に基づく院内感染サーベイランスの実施と結果に基づく改善活動
- 疫学的な知識に基づく院内感染サーベイランスの実施と結果に基づく改善活動
- 職業感染防止対策
- 感染防止対策についての啓発教育(全職員対象に年2回の研修実施)
- 感染防止対策についてのコンサルテーション
- ファシリティ・マネジメント(医療サプライ、廃棄物処理、空調・水質管理、院内清掃)の推進
- 抗菌薬の適正使用の推進
- アウトブレイク対応
- 保健所及び地域の医師会と連携し、他の保険医療機関と合同で少なくとも年4回程度、定期的に院内感染対策に関するカンファレンス(うち1回は新興感染症の発生等を想定した訓練)及び感染防止対策の相互評価の実施
- ICTとの連携
- その他、感染防止対策に関すること
- 院外、国内外の感染対策に関わることを協議するために感染管理室会議を開催する。
災害救護支援室
災害救護支援室の紹介

福井赤十字病院災害救護支援室は平成30年4月に設置され、医師、看護師、診療放射線技師、事務職員からの多職種で構成されています。
災害時における医療救護は、赤十字社の大きな使命です。指定公共機関である日本赤十字社の病院は、様々な国内法(日本赤十字社法、災害対策基本法、災害救助法、武力攻撃事態法等々)により災害時の救護活動を義務付けられています。
災害救護体制
災害拠点病院
大規模災害発生時に各地域の初期救急医療の中心になる病院で、当院も福井県知事から指定を受けています。
24時間緊急対応できる設備、ヘリコプター発着場(本館屋上に設置されています)、医薬品・食料・飲料水の備蓄、水・電気・ガスなどのライフラインの確保、耐震化構造などが条件となっています。
救護班について
日本赤十字社の根幹事業でもある「災害救護」において全国の赤十字病院で組織されています。災害の規模に応じて、全国に派遣されます。
災害派遣の際は、食糧・水などはあらかじめ当院、日本赤十字社福井県支部で用意した物資を持参する自己完結型で被災地での救護活動を行います。
1班は基本的に、医師1名、看護師長1名、看護師2名、薬剤師1名、事務職員2名の計7名で構成されていて当院も8班の救護班が組織されています。原子力災害を伴う場合は、救護班の放射線量等を管理するために放射線技師も救護班に参加することもあります。
阪神淡路大震災、東日本大震災などを含め、これまで多くの災害に派遣されています。
DMATについて
DMATとはDisaster Medical Assistance Teamの頭文字をとって略して「DMAT(ディーマット)」と呼ばれています。大地震の大災害、航空機・列車事故、爆発事故といった外傷をともなう多数の傷病者が発生した場合に現地に迅速に駆けつけ、救急救命医療を行うための専門的な訓練を受けた医療チームです。
医師1名、看護師2名、業務調整員1名の計4名を基本単位として活動します。
本院には医師5名、看護師9名、業務調整員(うち事務職員3名、薬剤師1名)4名(令和4年7月1日現在)が養成研修を終了しています。
災害医療コーディネーター
災害発生時に県庁、保健所などの行政機関や全国の赤十字病院と連携し司令塔となる役割として、当院の医師が「統括DMAT」、「都道府県災害医療コーディネーター」、「日赤災害医療コーディネーター」に任命されており、院内のみならず県庁、保健所、日本赤十字社本社(東京都)等への派遣を行います。
こころのケア
災害は被災者に大きなストレスを与えます。ストレスの程度は災害状況の深刻さや被災者自身の性格によって異なります。また、ストレス反応は、身体、思考、感情、行動によって表れます。災害によって、持病の悪化、イライラして周囲の人と上手くいかなくこともあります。
こころのケアは被災者に寄り添い、ストレスの軽減を図り、ストレス症状によっては専門家のカウンセリングが必要なる場合あります。
日本赤十字社では、災害時のこころのケア活動を実施するにあたり、救護班員への普及指導体制を強化する指導者がいます。日本赤十字社本社にて研修を行い、当院には看護師9名、事務職員2名が研修を修了しております。
院内で開催している研修会
救護班研修
年1回、日本赤十字社福井県支部と共同で常備救護班員を対象に様々な想定訓練を行っています。
こころのケア研修
被災地に赴いた際、被災者に寄り添いこころの苦痛を軽減できる人材育成を目的として3年目看護師は必須及びその他職員向けに1回の計2回行っています。
院内で開催している訓練
福井赤十字病院総合災害対応訓練
院内スタッフの災害対応力向上を目的として、年1回開催しております。
災害対策本部の設置、自主登院職員の受付、職員の安否の確認、院内の臨時診療エリア設営及び運営などの実働に即した訓練を行っています。
原子力被ばく患者受入れ対応訓練
原子力発電所で発生した被ばく患者の受入れを想定して、被ばく傷病者を受け入れる除染エリアの設営、被ばく傷病者の屋上ヘリポートから除染エリアまでの移動、被ばく汚染部位の除染などを想定した訓練を実施しています。
他機関が主催している訓練への参加
- 政府主催広域大規模地震時医療活動訓練
- 近畿府県合同防災訓練
- 福井県総合防災訓練
- 福井県国民保護図上訓練
- 福井県原子力総合防災訓練
- 日本赤十字社中部ブロック(第3ブロック)災害対応訓練
- 近畿・中部ブロックDMAT実働訓練
- JR西日本総合事故対応訓練
DMATや救護班を派遣した災害(東日本大震災以降の主なもの)
令和4年度8月福井県南越前町豪雨災害
令和4年8月7日(日)~8月13日(土)にかけて今庄診療所に救護班を派遣
救護班1班から職員のべ50名を派遣(派遣職種:医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、事務職員)
令和元年度10月台風19号にともなう風水害
長野県長野市に救護班、コーディネートチーム、こころケア要員を派遣
救護班1班7名を派遣(派遣職種:医師、看護師、薬剤師、事務職員)
コーディネートチーム1班2名を派遣(派遣職種:医師、看護師)
こころのケア1班4名を派遣(派遣職種:看護師、事務職員)
平成30年7月西日本豪雨
広島県呉市に1班7名を派遣
(派遣職種:医師、看護師、薬剤師、事務職員)
平成30年2月福井豪雪
国道8号線に立ち往生した車両運転手の健康観察等を行うため救護班2班6名を派遣
(派遣職種:医師、看護師、事務職員)
熊本地震 救護班2班15名を熊本県に派遣
(派遣職種:医師、看護師、薬剤師、放射線技師、事務職員等)
こころのケア要員として3名派遣(派遣職種:看護師、事務職員)
熊本赤十字病院の病院支援要員に2名派遣(派遣職種:看護師)
健康生活支援要員として1名派遣(派遣職種:看護師)
東日本大震災 DMATを宮城県仙台市に1班7名を派遣
(派遣職種:医師、看護師・助産師、事務職員)
救護班を岩手県陸高田市、宮城県石巻市に14班127人を派遣
(派遣職種:医師、看護師・助産師、薬剤師、放射線技師、事務職員等)
こころのケア要員として延べ11名を派遣(派遣職種:看護師、事務職員等)
石巻赤十字病院の病院支援延べ8名派遣(派遣職種:看護師、薬剤師)