関節外科センターについて
我が国は既に超高齢化社会に突入しており、それ故、高齢の方々の生活の質を保っていくことや健康寿命の延伸のためには、関節疾患の治療は非常に大切です。関節の痛みで苦しんでいる患者さんは非常に多く、例えば変形性膝関節症と呼ばれる膝の痛みを持つ患者数は3000万人と推定されています。これは従来の予測よりも遥かに多く、また近年の健康意識の高まりと共に今後も増加傾向になると予想されています。
従来は、「高齢だから痛みは我慢する」という考えの患者さんも多く見られましたが、「痛みを我慢して年を重ねるよりも早期に治療して元気に老後を暮らしたい!」というように近年は生活様式や痛みに対する考え方も以前とは大きく変化し、多様化しています。そこで、これらの様々なニーズに対して、患者さんの個人個人に寄り添った治療を専門的に行う為に関節外科センターを開設しました。
センター化の目的
センター化をする目的は2つあります。
- チーム医療の実現
一つ目の目的は、病院内、院外を含めたチーム医療をすることです。例えば、がん治療などではチーム医療は一般的ですが、全国的に見ても整形外科分野では全く盛んではありません。しかし、変形性関節症による関節痛は国民病と行っても過言ではなく、チームでの医療の重要性は言うまでもありません。これまでを顧みても当院での治療選択も、リハビリテーションの方針についても医師主導であり、一方通行であったことが反省点であると思っています。今後は、医師、看護師、理学療法士などを含めた様々な職種が積極的に参加することにより、より最善、最適な治療を一人一人の患者さんに提供したいと考えています。具体的には、専門的な知識と技術を持った関節外科医療チームを作り、個々の患者さん毎に個別の治療を行い、各々の生活スタイルにあった細やかなリハビリテーションを行っていきます。
- 専門性の向上
二つ目の目的は、関節外科治療に対する専門性の重要性をより高めたいと言うことです。近年の関節外科の進歩は目覚ましいものがあり、これまでは長期的には治療成績が悪くなると思われていた手技、治療しても効果がないと言われていた手法が実は成績が良かった等の、以前とは全く違う事実が多々明らかとなってきています。このような新しくわかってきた常識を踏まえて、これに基づいてより専門性を持った治療を提供できるように専任のスタッフで治療に臨むこと必要であると思っています。私達自体も日々進化、変化していけるよう努力していく所存です。福井県の皆様に安心かつ、最先端のチーム医療を提供できるように日々邁進しておりますので、引き続きのご厚情を賜りたくお願い申し上げます。
治療方針
当センターでは、手術療法として、最小侵襲での人工関節置換術を軸としながら、関節温存手術である関節鏡下手術(半月板縫合など)などを行って参ります。人工関節置換術は近年の手術手技、機械の進歩により20世紀で最も成功した手術の一つであると言われています。当センターでは患者さんの症状、状態に応じて様々な手術治療を提案しています。
特に新たな取り組みとしては、関節外科センター医師全員と、専任の理学作業士、作業療法士などが定期的にカンファレンスを行い、ご紹介頂いた全患者さんの術後経過、そして、その後のフォローの仕方についても、個別の治療を患者さんごとに提供できるようにと考えています。
具体的には、人工膝関節全置換術に関しては、これまでよりも、より自然な膝の動きを再現できるという手術手技を(個人個人の関節の形にあわせた手術)〈図1〉行っており、術後数日で階段昇降が出来て、あぐらが出来る方も多くおられて喜んで頂いております。変形性股関節症についても最小侵襲手術を行っています。手術法としては、股関節周囲の筋肉の隙間から手術〈図2〉を行い、筋肉、靭帯を温存した人工股関節置換術を行っています。これにより術後のリハビリが超早期になり、術後制限も全くございませんので、正座のできる患者さんもたくさんいらっしゃいます。

〈図1〉

〈図2〉
疾患【変形性膝関節症、変形性股関節症】に関しては、整形外科のページをご覧ください。
担当医から患者さんに一言

石川医師・淺野医師
関節の痛みで苦しんでいる方は非常に多いです。例えば変形性膝関節症と呼ばれる膝の痛みを持つ患者さんは3000万人と推定されており、私たちの予想よりも遥かに多く、非常に身近な病気であると言えるでしょう。痛みがあると、これまで当たり前にできていたことができなくなることが多くなります。そうなると、最終的には介護が必要となり、自立した生活は困難になることが多くなります。私たちは、そのような関節痛に対して少しでも改善できるお手伝いができないと考え、この度、関節外科センターを設立致しました。当院が積み重ねてきた総合病院としての利点、特徴を活かすためにセンター化することで手術療法、リハビリテーションの機能を集約し、より最新の治療を皆様に提供できるようにと考えております。
当センターでは患者さんのご希望、生活スタイル、そして病気の状態に合った治療法を様々な選択肢から選んで頂けるように努力しています。手術療法は術後に喜んで頂けるように、痛みの少ない最小侵襲で正確な手術に力を入れて取り組んでおります。痛みで悩んでおられる場合は、お気軽に相談ください。