自然気胸に対する手術の進歩
自然気胸について
自然気胸(しぜんききょう)は肺表面に「ブラ」と呼ばれる肺のふくろが生じ、そこに穴があいて胸腔内(きょうくうない)に空気が漏れ、肺がしぼむ病気です。軽症例では軽い咳(せき)や胸痛がある程度ですが、進行すると呼吸・循環不全から命にかかわる場合があります。
10~20歳代の若年者では命取りになる場合は少ないですが、再発を繰り返し、運動部の部活や学校、会社を休まなければならず社会的に問題になることがあります。喫煙歴がある方や肺に持病をもつ高齢者では重症化することも多いです。
当科では、再発した場合や空気漏れが止まらない場合、両側発症例(同一時点で両側に気胸が存在する)などに手術を行います。呼吸器外科手術の約1/4が自然気胸に対して行われており、肺がんに次いで手術数の多い疾患です。
手術方法の変遷
手術そのものは、昔も今も空気漏れの原因であるブラを切除したり、空気が漏れている穴を糸で結んだりします。筆者が臨床医になった1989年からの手術方法の変遷を考えていきます。胸腔鏡(きょうくうきょう)(写真1)というカメラを用いた手術が普及する前と後になります。
胸腔鏡以前の手術
胸腔鏡という望遠鏡のようなカメラが普及する前の1989年頃の気胸手術は、全身麻酔下に5~10cmの皮膚切開を行い、肋骨と肋骨の間を開けて(開胸)、ブラを切除して手で肺を縫い閉じていました。麻酔方法については、現在では左右分離換気といって特殊な挿管チューブを使用し、手術側の肺は換気を行わずにしぼませた状態で手術を行います(この方が格段に手術しやすい)。
しかし、当時はそのようなチューブはなく、肺は常に動いて(換気して)おり、手術しやすい状況ではありませんでした。そのため、麻酔科医と声を掛け合いながら、換気を調節してもらって手術を行っていました。
胸腔鏡以後の手術
1993年頃から左右分離換気用挿管チューブが普及しました。さらに胸腔鏡が現れ、開胸しなくても胸に1~3cmほどの穴をあけてカメラを挿入し、胸腔内を観察しながら手術できるようになりました。
また、自動縫合器(写真2)という、手で縫わなくても肺を挟んでレバーを引くだけで肺を自動的に切除できる器械も使用できるようになりました。胸腔鏡や自動縫合器は改良が重ねられ、胸腔鏡は4Kの明瞭な画質が得られるようになり、自動縫合器はもろい肺を補強する人工膜を装着したものが開発されました。
これらの進歩によって、胸腔鏡以前よりも質の高い手術が可能となり、現在に至っています。
気胸手術の今後
喫煙歴や肺に持病をもつ高齢の気胸患者さんの中には、全身状態が不良で全身麻酔をかけられない方もいます。当科では、そのような患者さんに対して局所麻酔で手術を行い、75%の方で空気漏れを止めることができました。今後は、手術中の呼吸管理を工夫するなどして、さらに成績向上を目指したいと考えています。



