総合診療科の位置付け

総合診療科の位置付け

総合診療科とは

総合診療とは、一言でいえば患者さんの全体的な健康問題に対応する医療アプローチのことです。総合診療科とは、患者さんの心身の健康面、家族関係、就労・経済状況などを多角的に診て、その人が望む暮らしを送れるように、あらゆる専門医や協力者と連携してその解決にあたる科とされています。

患者さんが体調を崩して医療機関に受診したものの診断がつかない場合、1つの臓器に拘らない多面的な診察、必要があれば専門医に意見を伺うなどして診断・治療につなげていくのが総合診療科の主な役割です。

心臓病、脳梗塞(のうこうそく)、脳出血などを未然に防ぐため、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をコントロールすることや、感染症にかかっても重症化しないように予防接種を行うなど、疾病予防を図ることも総合診療科の役割の1つといえるでしょう。

また、高齢者が疾病に罹患(りかん)した場合、日常生活の活動レベルが落ちないように理学療法士、作業療法士、言語療法士などと協働してリハビリテーションを行い、自宅での生活が続けられるようにサポートします。さらに、自宅での自立した生活が困難になってきた場合には、介護保険の申請や見直し、家族関係・介護体制の評価、受けられる介護サービスなどをもとに、住み慣れた地域で自分らしく過ごせるように生活をマネージメントするのも総合診療科の役割の1つです。

なぜ総合診療科が必要なのか?

本書でも紹介しているように、臓器別の専門科の医療は日々進歩し、新たな知見、技術が登場し、患者さんに新たな恩恵をもたらしています。それらの医療の一つひとつは専門的な知識と技術を要するため、医療の進歩により、医療は専門領域に細分化されていく傾向にあるように思います。

高齢になるほど、複数の疾患に罹患することが増え、そのたびに複数の診療科を受診する必要があり、1人の患者さんに対して複数の専門医がかかわることもあります。各疾患に対して手厚い医療が受けられるメリットはありますが、各専門医の受診のための待ち時間が増えたり、内服薬が増えたりといったデメリットが生じるかもしれません。

また、加齢などによる身体的な虚弱により、高度で負担のかかる検査・治療が難しく、通院自体が困難になった場合、複数の疾患を総合的に一度で対応でき、体調を崩したときにどの科を受診すべきか助言できる医師が必要になってくるでしょう。

総合診療専門医検討委員会は、「図1」に示されるように各専門科領域を縦串とした場合、横串にあたる包括的アプローチを総合診療専門医に求めています。

図1 「縦串」と「横串」の視点
(総合診療専門医検討委員会ホームページ: 一般の皆様へ https://jbgm.org/ippan/ より引用)

当院での総合診療科の役割と目標

前述のように総合診療科の守備範囲は多岐にわたります。クリニックなどの診療所、小~中規模の総合病院、大学医学部附属病院などではそれぞれの果たすべき役割が異なり、その役割を一律に定めることは難しいでしょう。

当院の総合診療科は地域の中核病院として、主に以下の診療を行っています。

①専門科を特定できない訴え(例えば発熱、体重減少、全身のむくみなど)の患者さんの診療

②クリニックから紹介された診断がつかない患者さんの診療

③救急外来を受診した患者さんが入院を必要とした場合、特定の臓器別専門科が扱わない疾患の継続的な入院診療

④ワクチン接種

①と②については、基本的には総合診療科の外来で検査・治療を行い、専門科の診療が必要な場合は、速やかに専門科に紹介します。また、患者さんの状態によっては入院での診療を継続する場合もあります。

③の場合も必要に応じて専門科に診察を依頼します。介護などで生活環境の調整が必要な入院患者さんには、医療ソーシャルワーカーと協働して、患者さんとその家族の健康・生活を守ることに努めます。

④は成人のみの対応となりますが、海外渡航のためのワクチン、医療関係者のためのワクチン、外傷後の破傷風ワクチンやその他各種ワクチン接種を行っています。2024年からはRSウイルスワクチンにも対応しています。

「図2」は、全国でも先駆けて総合診療科を創設した自治医科大学附属さいたま医療センター総合診療科の菅原斉先生が提唱する、総合医が心がけるべきプライマリ・ケアの概念です。総合医には、どのような患者さんも「まず、引き受ける」気概があります。総合医は、自己開発と生涯学習により、自分自身の臨床能力の向上(自己完結できない疾病・病態(A)の範疇が少なくなるように)に努め、自分が解決できる疾患・病態(X)と専門医の協力が必要な問題点(Y、Z)を的確に判断します。

これは言葉で表現するほど容易なことではありませんが、当院の総合診療科としても、臓器別の専門科と十分なコミュニケーションをとりつつ、単なる「振り分け」外来にならないように自身の診療の幅を広めていくとともに、臨床研修医や総合診療を志す医師の教育にも力を入れていくことを目指していきます。

図2 総合医のプライマリ・ケア
(自治医科大学附属さいたま医療センターホームページ:診療科のご案内:総合診療科:総合医とは https://www.jichi.ac.jp/center/sinryoka/n_sougou/index.html より引用)
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