お知らせ

お知らせ令和8年3月1日市民公開講座「“もしも”の前に知っておきたい! 脳卒中と心臓病~ 予防のコツと広がる治療の選択肢~」開催報告を掲載しました

福井赤十字病院の公開講座「“もしも”の前に知っておきたい! 脳卒中と心臓病~予防のコツと広がる治療の選択肢~」が3月1日、福井赤十字病院で開かれました。約220名の参加者が脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化の危険因子や予防に必要な知識をはじめ、最新の研究結果や治療法、これらの病気を防ぐための食事について理解を深めました。

内容

脳卒中の予防、治療の最前線

動脈治療のパラダイムシフト~知らないうちの動脈リスク、見つけて防ぐ心筋梗塞~ 

今日から変わる!脳卒中・心臓病を防ぐための食事術

脳卒中の予防、治療の最前線
脳神経外科 福光 龍 部長

まず予防、発症したらすぐ病院へ

 脳卒中など日本人の死因のトップだった脳血管疾患の死亡率は1970年代から減少し、現在は第4位です。しかし、高齢者の入院を必要とする疾患では今も第1位、介護が必要となり寝たきりになった原因でも第1位となっており、社会に大きな影響を与えています。脳卒中は、脳の血管に突然 起こる病気です。血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血、脳を覆っているくも膜の下で出血するくも膜下出血の3タイプがあり、食生活の欧米化や運動不足、飲酒、喫煙、高血圧、心房細動、糖尿病などが危険因子といわれます。日本脳卒中協会が作成した「脳卒中を予防するための十か条」の一部を紹介します。最初が「高血圧から治しましょう」です。血圧を下げる治療を行うと、脳卒中の発症確率や死亡率を約4割減らせる可能性があり、治療開始の目安は135/85 m m H g 以 上です 。下げる目標値は自宅で測定した場合、125/75mmHg未満とされています。「不整脈は見つかり次第受診」も重要です。心房細動という不整脈が起こると、流れが悪くなった血液が心臓で固まり血栓ができ、これが脳に運ばれ血管に詰まると心原性脳梗塞を起こします。自分で脈を測り不整脈に気づいたら、かかりつけの医師にご相談ください。

 「煙草を止める意思を持て」もあります。全く吸わない人に比べると、1日20本以上吸う男性は2倍、女性は4倍脳卒中になりやすいといわれます。アルコールは「飲むならばなるべく少なく」です。近年の調査で、飲まない人の方が、多くの病気の発症リスクが低いと示されました。飲む場合は、ビールなら中瓶半分、日本酒なら0.5合が目安です。

 脳卒中の恐れがある場合は、発症を防ぐための手術を行うこともあります。例えば、脳と心臓の間にある首の血管が非常に狭くなる高度頸動脈狭窄症では、ステントという金属の筒を血管のなかに入れ、内側から広げる頸動脈ステント留置術(CAS)で治療。くも膜下出血の原因になる未破裂脳動脈瘤の治療では、太ももから動脈にカテーテルを入れて金属コイルを運び、動脈瘤の中に詰めるコイル塞栓術を行います。

 脳梗塞や脳出血を発症すると、左右どちらかの半身脱力やしびれ、言語障害などの症状が現れ、くも膜下出血は突然激しい頭痛が起こります。これらの症状が起きたらすぐに救急車を呼んでください。脳梗塞の急性期治療の一つに、血管に詰まった血栓を薬で溶かし再開通させるtPA静注療法という点滴治療があり、発症から原則として4.5時間以内に使用できるといわれています。また、カテーテルで運んだステントに血栓を絡みつかせ引き抜く血栓回収療法は、発症から時間が経つに従い効果が薄れるため、少しでも早く病院に行く必要があります。

 脳卒中の治療は機器の発達により、今後さらに選択肢が広がると考えられています。当院では、今年1月に、新しい脳血管撮影装置を導入し、より安全で精度の高い治療ができるようになりました。この装置も活用し、福井県の皆さまを脳卒中から守っていきたいと思います。

動脈治療のパラダイムシフト
~知らないうちの動脈リスク、見つけて防ぐ心筋梗塞〜 
循環器内科 吉田 博之 部長

大切なのは予防・早期発見・生涯治療

 心臓に酸素と栄養を運ぶ血管は、左冠動脈の前下行枝と回旋枝、右冠動脈の3本です。これらの内腔が動脈硬化で閉塞すると心筋梗塞を発症します。動脈硬化は、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が冠動脈内膜に蓄積し、プラーク(塊)に変わりながら進行。薄くなった内膜が破裂すると血栓ができ、プラークや血栓で内腔が狭くなると狭心症になり、完全に詰まると心筋梗塞を起こします。突然起こる急性心筋梗塞は死に至る重篤な疾患のため、迅速な診断と治療が予後を大きく左右します。

 心筋梗塞の治療の一つが、胸を切開して行う冠動脈バイパス手術です。内胸動脈や橈骨動脈など心臓以外の血管を用い、狭窄部から離れた末梢にバイパスを作ります。このような開胸手術を行わずに治療するために、私たちは、冠動脈の狭窄部にステントを留置して拡張し、血流を再開させるカテーテル治療の技術を磨いてきました。最近は、再狭窄予防の薬が塗られたステントが登場し、再狭窄率は10%以下となっています。

 しかし、バイパス手術とカテーテル治療の1年間の予後を比較した研究では、バイパス手術の方が良好であるという結果が示されています。動脈硬化プラークは狭窄部以外にも存在するため、狭窄部の先に血流を確保するバイパス手術に対し、カテーテル治療は局所的な治療にとどまります。こうしたことから、当院では食事や運動などの生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせた「全身治療」を重視しています。

 また、心筋梗塞は重度の狭窄部よりも軽度の狭窄部から発症するケースが多いことが分かっています。こうした背景もあり、急性心筋梗塞の入院患者数は増加傾向にあり、国は予防と早期発見・早期治療を推進しています。

 最近、学会を中心に、狭心症を慢性冠症候群、心筋梗塞を急性冠症候群と名称を変える動きがあります。理由は、「慢性」という言葉にすることで、生涯にわたって治療が必要な病気であることを示すためです。さらに、慢性冠症候群の治療目標は急性冠症候群に進行させないことだと明確にされています。

 スコットランドでは、慢性冠症候群の早期診断についての研究がなされ、胸痛による受診者に冠動脈CTを行った結果、5年後の心筋伷塞の発生が41%減少。その理由は、冠動脈CT でプラークが見つかると、スタチンというLDLコレステロールを下げる薬が処方されるからです。昨年 著名な医学誌「ランセット」が、「心臓病は症状が出る前から予防を行い、動脈硬化を早期発見し、生涯にわたって治療すべき」と提言し、大きなパラダイムシフトとなりました。冠動脈CTは動脈硬化の早期発見につながる検査で、症状が出る前に、軽度の狭窄の段階でプラークを見つけることが

可能です。

 最も心筋梗塞になりやすいのはLDLコレステロールが高い人、という調査結果がありますが、数年前から、LDLコレステロール治療に効果的なPCSK9阻害薬が使用されています。このように、心筋梗塞などの冠動脈疾患は治療法や薬剤の進化とともに、早期介入、生涯治療の時代となっているのです。

今日から変わる!脳卒中・心臓病を防ぐための食事術 
栄養課 杉原 二葉 管理栄養士

食材を選び、料理法を工夫する

 脳卒中と心臓病のリスクである動脈硬化を予防する3つのポイントをご紹介します。

 1つ目は適正体重の維持です。体格を示すBMIは、体重を身長(m)で 2回割って計算します。体重65㎏、身長160㎝なら、65÷1.6÷1.6≒25.4。BMI が25を超えると、動脈硬化のリスク因子の肥満と判定されます。

 2つ目は栄養バランスが取れた食事です。朝昼夕の3食ごとに主食、主菜、副菜を食べることを意識してください。動脈硬化の予防には、主食は玄米や七分付き米、麦飯、ライ麦や全粒粉のパン、蕎麦などが効果的。主菜は肉、卵、チーズもありますが、魚や大豆、大豆製品がおすすめです。肉は赤身を選び、鶏肉は皮を取り除きましょう。副菜の野菜、海藻、きのこはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富です。また、料理用の油は1日に大さじ1~2杯を目安に、蒸す、焼く、煮るなど油の少ない料理方法も取り入れてください。

 3つ目が減塩です。1日の塩分量の基準は、男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧などの病気がある方は6g未満です。塩やしょうゆ、みそなど塩分量が多い調味料を減らし、だしや薬味、スパイス、酢やレモンなどの酸味を加えてみてはいかがでしょう。

 通院されている方は、管理栄養士による栄養相談を受けることもできますので、主治医にご相談ください。

お問合せ窓口 

福井赤十字病院 事務部 病院経営課 TEL 0776-36-3630(代表)