緩和ケア病棟 PCUブログ
ある晴れた休日の午後、患者さんをお誘いし屋上庭園へ散歩に出掛けました。
抜けるような青い空の下、太陽の光は暖かく、肌には柔らかい風が触れ、八幡山からは鳥の声が聞こえ、辺りには桜の甘い香りが漂っていました。
患者さんは空を仰ぎ、大きく深呼吸した後、「生きてる」と仰いました。
そして、今の自分には病室が世界のすべてと感じること、その世界の終わりが見えないつらさを話されました。
入院によって家族や社会から離れ、孤独を感じる方は少なくありません。
コロナ禍が続く今、緩和ケア病棟においても面会が制限され、大切な人とのつながりをもつことが容易ではなくなりました。
日常は決してあたりまえに続くものではないことを思い知らされました。
そして非日常と感じていた日々も日常になりつつあります。
私たち医療者は、患者さんが接することのできる数少ない存在です。
日頃交わす言葉、触れる手のぬくもり、目に映る景色に心を配り、あの日屋上で感じた心地よい感覚を病室でも感じてもらえるようケアしたい、そして患者さんの生きる力を支えていきたいと心を新たにしました。
※屋上庭園の写真