中棚温泉
私の今夜のお宿は『藤村ゆかりの宿』・・・
(女将がふじむらゆかりさんではありません)
山の中と言う表現がふさわしいのか、藪の中と言うほうがいいのか・・・実に静かなところです。
山の傾斜に沿って建てられた風流な建物でした。
窓を開けるとヤギの泣き声がし、散歩に出ると池のほとりでカモがお昼寝。
温泉宿のフロントには藤村直筆のコピーという『小諸なる古城のほとり』の額が飾ってありました。
直筆はおせいじにもきれいな字とは言えなかったけど。
山の中につくられた階段を登っていくと『文人の湯』があります。
脱衣場は畳なのに、湯船とのしきりがなく、不思議な温泉でした。
りんご風呂があると言うので楽しみにしていたのですが、10月から3月までということで残念!!
そこには若き春樹青年(藤村の本名)が20歳のとき、出会った佐藤輔子さんを思って歌った詩『初恋』の詩
・・・まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思いけり・・・
が書いてあります。
若かりしころ、藤村や光太郎の詩集を好んで読んだ私としては、甘酸っぱい気持ちでそれらを見て、お肌ピチピチのころの自分に思いを馳せて、じっくりと温泉を楽しみました。
りんごが浮いていたら、気分はもっと甘酸っぱくなったかも・・・