円形脱毛症について
円形脱毛症の症状
円形脱毛症は幅広い年齢層に発症する疾患ですが、主に若年者に多くみられ、5つのタイプに分類されます(図1)。
大部分は頭髪に境界がはっきりした脱毛斑(だつもうはん)が単発で出現し(単発性通常型)、数か月で自然治癒が期待できます。脱毛斑が多発する(多発性通常型)、頭髪全体が脱毛する(全頭型)、眉毛、ひげ、体毛にも脱毛が進行する(汎発型)、生え際が帯状に脱毛する(蛇行型)があり、これらの場合、治療に難渋することも多いです。一度、生え揃っても再度脱毛を繰り返すこともしばしば経験します。
何らかのきっかけによって本来、病原体と戦う働き(免疫)が自分自身の体に向いてしまう病気を自己免疫疾患と呼びます。円形脱毛症は、毛を作る毛包(もうほう)周囲に炎症が起こり、一部のリンパ球が毛包の組織を壊そうとする自己免疫反応によって、毛が抜ける病気です(図2)。
また、円形脱毛症はアトピー性皮膚炎や甲状腺疾患、全身性エリテマトーデスなどの膠原病(こうげんびょう)と合併することも知られています。精神的ストレスがきっかけとなる場合もありますが、因果関係の証明が難しく、さらなる検討が必要です。
円形脱毛症の診断
境界が明瞭な脱毛斑が見られる場合には、診断に苦労しません。しかしながら脱毛症には、男性型脱毛症、トリコチロマニア(抜毛症)、休止期脱毛症、先天性脱毛症、瘢痕性(はんこんせい)脱毛症など、さまざまな病気があるため、専門医による診察が必要です。これらの疾患は、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて頭皮や頭髪の状態を確認することで診断が可能となります。
円形脱毛症であれば、急性期だと感嘆符毛(かんたんふもう)(毛の先細り)、黒色点(切れ毛)など、慢性期だと黄色点(毛穴に皮脂が詰まった状態)といった特徴的な所見が認められます(写真)。トリコチロマニアは、自分で毛を引っぱって抜いてしまう病気ですが、円形脱毛症と見た目が似たようになることがあり、診断が困難な場合があります。ダーモスコピーでよく観察すると、毛穴に一致した細かい出血点やコイルのようにうねる毛、V字に割れた毛などが見られる特徴があるため、診断の一助となります。
円形脱毛症を確定診断するための採血検査はありませんが、似たような脱毛を起こす疾患に全身性エリテマトーデス、甲状腺疾患、梅毒などがあり、採血検査によってスクリーニング(振り分け)することができます。
円形脱毛症の治療
治療の基本的な考え方は、自己免疫を抑制することです。急性期ではステロイドの塗り薬を塗布したり、ステロイドを脱毛部位に注射したりします。脱毛が広範囲に及ぶ症例では、ステロイドパルス療法といって短期間で大量のステロイドを点滴する治療を行うこともあります。
ステロイドパルス療法は、抜け始めてから6か月以内が適応となっており、それ以上経過した場合には効果が得られにくいとされています。急性期から慢性期の治療では、紫外線を照射したり、局所免疫療法といってかぶれを起こす薬剤を脱毛部位に塗布したり、液体窒素療法を行ったりしています。
近年では、毛包へのリンパ球の攻撃を抑制するJAK阻害薬という内服薬が使用できるようになり、難治性の広範囲な円形脱毛症でも一定の治療効果が得られています。
そのほか、頭皮の血行を改善する塩化カルプロニウム外用や、アレルギー薬の内服といった治療もガイドライン上で推奨されているため、同時に行うことも多いです。5%ミノキシジル外用薬は、脱毛範囲が狭い場合には効果が期待できるため、症例によってはお勧めしていますが、病院での処方はできないため薬局で購入する必要があります。
なお、ミノキシジルの内服については、国内では認可されておらず、胸痛、心拍数増加、動悸(どうき)、息切れ、呼吸困難、うっ血性心不全、むくみや体重増加など、重大な心血管系障害が生じるリスクもあるため、行うべきではありません。



