血液がんに対する治療と血液内科の取り組み
急性白血病
急性白血病は「芽球(がきゅう)」と呼ばれる未熟な白血球ががん化した病気です。血液を作る工場である骨髄(こつずい)で「がん化した芽球(=白血病細胞)」がどんどん増加し、正常な血液が作られにくくなるため、免疫力の低下(正常な白血球の減少)、貧血(赤血球の減少)、出血(血小板の減少)などを招きます。
治療の第一到達目標は、抗がん剤を使って白血病細胞を減らし、「寛解*1(かんかい)」と呼ばれる正常に近い骨髄に戻すことです。寛解になれば、骨髄は血液を作る能力が回復します。それでもまだ体内に白血病細胞がたくさん残っているため、さらなる治療で白血病細胞をゼロに近づけ、治癒を目指していきます。
しかし、抗がん剤だけで治療を完遂できる白血病もあれば、造血幹細胞移植(骨髄移植など)を必要とする場合もあります。最近では、白血病細胞が持つ遺伝子異常の情報を参考にして、患者さんごとに最適な治療を選択する流れが徐々に確立されつつあります。
さらに、治療法も進化しており、従来の抗がん剤だけでなく、白血病細胞が持つ特定の分子を標的とした治療薬(分子標的薬)や、遺伝子の発現を制御する薬剤も出てきました。ベネトクラクス、キザルチニブ・ギルテリチニブ、アザシチジンといった薬剤があり、当院でもこれらの薬剤を用いて治療を行っています。
*1 寛解:病気の症状が、一時的あるいは継続的 に軽減した状態
悪性リンパ腫
悪性(あくせい)リンパ腫(しゅ)は、「リンパ球」ががん化した病気です。ただ、一口に悪性リンパ腫といっても細かい病型が100種類以上もあります。
どの病型かを特定することが治療の方針にかかわるので、まずは病変の一部を検査や手術で採取し、しっかり診断をつける必要があります。典型的には、リンパ節が腫(は)れてきて気づかれることが多いですが、体中のどこからでも発生するため、臓器にしか発症していない場合などは診断が難しいこともあります(図)。
治療は基本的には抗がん剤による全身治療になります(例外はあります)。最近では、分子標的薬と抗がん剤を組み合わせて治療することが多いです。
また、治療の強化が必要と判断された患者さんや、再発した患者さんにはご自身の造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)を利用した強力な治療を行います。さらに近年では、患者さんの免疫力を利用した治療法(CAR-T療法、二重特異性抗体)も導入されています。
多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)
抗体を作る役割を持つリンパ球の一種である「形質細胞」ががん化した病気です。抗体のようで抗体ではない“抗体もどき(M蛋白(たんぱく))”を量産してしまい、免疫力の低下を招きます。
貧血を起こしたり、骨を溶かしたり、“抗体もどき”が腎臓(じんぞう)などの臓器に悪影響を与えたり、多種多様な症状を引き起こします。治療は、これらの症状が出てきたときに開始します。
高齢の方に多くみられる病気で、完全に治すことはまだ難しいとされていますが、最近は新しい薬剤が次々と登場しており、良好な状態を長期間維持できるようになってきました。当院でもさまざまな薬剤を用いて治療を行っています。
骨髄異形成症候群
血液を作る工場である骨髄で、血液のおおもとになる「造血幹細胞」が異常を起こし、“形の悪い血液”を作ってしまいます。「症候群」というだけあって複数の病気の集合体と考えられています。
“形の悪い血液”は作られても壊れてしまうので血液の数値に反映されません(無効造血といいます)。そのため、白血病と同じように免疫力の低下(白血球の減少)、貧血(赤血球の減少)、出血(血小板の減少)を招きます。この病気も血液がんの1つであり、白血病に進行することもあります。
治療の前には、まず「低リスク」か「高リスク」なのかを判断してから治療方針を決めていきます。「高リスク」の患者さんには、アザシチジンという薬剤や造血幹細胞移植を検討します。当院でもアザシチジンで治療を受けている患者さんはたくさんおられます。



