有水晶体後房眼内レンズ挿入術(ICL)による近視治療

有水晶体後房眼内レンズ挿入術(ICL)による近視治療

近視とは? 近視の患者さんの悩み

一般的に遠くがよく見える眼を正視(せいし)といい、近くがよく見える眼を近視(きんし)といいます。人間の眼は生涯一定ではなく、年齢とともに変化していきます。新生児では眼の長さが17mmほどですが、成長に伴って眼の長さは伸びていき、一度伸びた眼は元の長さには戻りません。

眼が伸びる過程において、網膜の前の方で像を結ぶと近視になります(図)。近視は眼科受診の際にさまざまな検査をして総合的に診断されます。近視の人は、普段は家の中では眼鏡を装用し、仕事やスポーツ、趣味を行う際に眼鏡が邪魔になる場合は、コンタクトレンズを装用することが多いと思います。

図 眼の構造と近視

若い近視の患者さんの悩みには、以下のようなものがあります。

  • 近視用の分厚い眼鏡は重く見た目がよくない
  • コンタクトの長期装用によりドライアイの悪化
  • 角膜(かくまく)(眼の一番表面にある組織)に傷がつく
  • 眼が充血する
  • 夜勤の際に眼鏡やコンタクトが不便

また、消防士や自衛隊員など職業柄、眼鏡やコンタクトレンズの使用が難しい、あるいは煩わしいため、有水晶体後房眼内(ゆうすいしょうたいこうぼうがんない)レンズ挿入術(ICL)の手術を受ける方もいます。これらの悩みを解消するためのICL手術は、多くの患者さんにとってメリットがあります。

写真1 ICLの形状

有水晶体後房眼内レンズ挿入術の歩み

1950年代に、有水晶体後房眼内レンズの基本概念が登場し、1980年代にはその存在がさらに広く知られるようになりました。有水晶体眼内レンズには、レンズを挿入する場所により、3種類のタイプがありますが、現在、国内で厚生労働省の承認を受けているのは後房型レンズのみです。

後房型レンズは、「コラマー」という生体適合性(人間の体に害を与えることなく共存できる性質)の優れた素材から作られており、蛋白質(たんぱくしつ)の沈着がほとんどなく、眼の中で長期安定性をもたらします。レンズの直径は12.1mmから13.7mmまであり、患者さんの眼の大きさや乱視度数によって選択します。

有水晶体後房眼内レンズ挿入術とは

写真2 ICLの術中 術後

有水晶体後房眼内レンズ(ICL)は、虹彩(こうさい)(茶色眼)の裏側の後房(こうぼう)といわれる部分に挿入し、近視を矯正する手術です。「眼内コンタクトレンズ」というイメージがわかりやすいと思います。

眼の傷口は最大幅3mm、手術時間は局所麻酔(意識のはっきりした状態での麻酔)で片眼15分程度です。日帰り手術のため、入院の必要もありません。また、レーシックのように角膜を削ることもないため、角膜の形も変化しません。ただし、自由診療(公的な保険が適用されない治療)ですので、費用は手術を行う施設によって異なります。両眼の手術費用は、検査から診察、手術を含めておおよそ60~80万円程度かかります。

当院における有水晶体後房眼内レンズ挿入術の適応と禁忌、術後合併症

当院で有水晶体後房眼内レンズの適応となる患者さんは、年齢が21~40歳まで、近視の度数が軽度から強度まで、術前の乱視度数にも決まりがあります(詳細は施設にお尋ねください)。

禁忌となる患者さんは、21歳未満の方、眼内の手術をする空間が狭い方、さまざまな眼の病気をお持ちの方、眼の手術歴がある方、局所麻酔かつ日帰りでの手術が難しい方などです。

手術は比較的短時間で終わり、患者さんへの体に負担が少ないですが、以下のような合併症のリスクもあります。

  • レンズと水晶体がこすれたことにより起こる白内障
  • レンズを入れたことで起こる炎症、細菌感染、眼圧上昇、角膜のむくみ
  • 手術前後の見え方の変化についていけない有水晶体後房眼内レンズ適応障害、などです。

また、残念ながら老眼の治療ではないため、手術を受けても老眼は治りません。

有水晶体後房眼内レンズ挿入術の 術後満足度

入院不要で、翌日には快適な視力回復が期待されるため、患者さんには大変好評です。裸眼での生活が可能となり、コンタクトレンズ装用で悩まされていたコンタクトレンズの日々の手入れから解放されるだけでなく、ドライアイや充血といった眼のトラブルも軽減します。また紫外線カット機能もあります。

手術後、暗い場所で明るいライトを見た際に、光の周りににじんだ輪が見える「ハロー現象」や、ギラギラした光が見える「グレア現象」を訴える患者さんがいますが、これらの症状は多くの場合、数か月で気にならなくなります。

術後の患者さんの満足度を確保するため、有水晶体後房眼内レンズ挿入術を行う前に、検査員が術前検査、適応検査、カウンセリングをしっかり行います。ただし、残念ながら術前検査、適応検査、カウンセリングの結果、手術ができないと判断される患者さんもいます。

近視が強く、有水晶体後房眼内レンズに興味がある方は、このレンズを取り扱っている眼科への受診をお勧めします。

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