内視鏡による耳鼻咽喉科手術

内視鏡による耳鼻咽喉科手術

内視鏡下副鼻腔手術

内視鏡下副鼻腔手術(ないしきょうかふくびくうしゅじゅつ)は、慢性副鼻腔炎や副鼻腔真菌症などの患者さんに対して実施しており、耳鼻咽喉科で最も行われている内視鏡手術です。術式は、I-V型に分類されています(表1)。

表1 内視鏡下副鼻腔手術

副鼻腔とは、顔面の骨内にある4つの空洞[篩骨洞(しこつどう)・上顎洞(じょうがくどう)・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)・前頭洞(ぜんとうどう)]のことです(図)。I型はもともとある副鼻腔と鼻腔をつなぐ穴(自然孔)を拡大する手術で、1つの副鼻腔の中に溜(た)まった分泌物(膿(うみ)など)を出しやすくします。II型は、1つの副鼻腔の中をきれいにする手術です。III型は、2~3つ(組み合わせはいろいろ)の副鼻腔の中をきれいにします。IV型は4つすべての副鼻腔をきれいにします。V型は一側副鼻腔の手術では治らなかった病変を反対側の副鼻腔とつなげたり、頭蓋底(とうがいてい)(脳の下部)や眼窩(がんか)(目の中)にまで広がった病変を副鼻腔と一緒に手術する方法です。

図 副鼻腔のしくみ

一般的な内視鏡下副鼻腔手術はIII型とIV型です。約30年前までは内視鏡を使用せずに副鼻腔手術が行われていたため、出血が多量となったり、術後に顔面がパンパンに腫(は)れたりすることがありました。しかし、内視鏡で副鼻腔手術を実施するようになってからは、出血も少なくなり顔面が腫れることもなくなりました。手術による痛みもほとんどありません。

内視鏡下鼻中隔手術

鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)の方は、内服薬や点鼻薬を使用しても鼻閉(びへい)(鼻づまり)が改善しませんが、手術により鼻閉が改善します。内視鏡下副鼻腔手術が普及してからは、鼻中隔手術も内視鏡で実施するようになりました。

従来の方法では、内視鏡で鼻中隔の先端5~10mm後方から手術するI型が一般的でしたが、2024年からは、鼻中隔の最前端から手術するIII型や、外傷などで外鼻(がいび)から湾曲変形している鼻中隔を外鼻と一緒に手術するIV型も保険適用で実施できるようになりました(表2)。I型やII型で改善しなかった湾曲も改善できるようになり、以前に鼻中隔手術を受けても鼻閉が治らなかった患者さんにも対応しています。

表2 内視鏡下鼻中隔手術

また、外傷や成長の過程で外鼻まで変形している患者さんに対しても、保険の範囲内である程度までは鼻中隔と一緒に手術が可能です(美容形成ではないため、鼻閉がある患者さんが対象です)。

内視鏡下耳科手術

耳科手術は、かなり古く(1950年ごろ)から顕微鏡下で行われてきました。現在では2.7mmの内視鏡が開発され、外耳道(がいじどう)を経由して内視鏡下に耳科手術を行うことが可能になり、2022年から保険診療で実施しています(写真1)。

写真1 内視鏡下耳科手術

慢性中耳炎(中耳の炎症が続いて鼓膜に穴が開く)、耳硬化症(耳の骨が硬くなる)、中耳真珠腫(ちゅうじしんじゅしゅ)(鼓膜付近に真珠のような塊(かたまり)ができる)などが手術の対象になります。

すべての耳科手術が内視鏡単独で実施できるわけではありませんが、外耳道や鼓膜の病変、鼓室(鼓膜より奥の空間)の鼓膜に近い場所の手術であれば、内視鏡単独で手術ができます。顕微鏡手術では、耳介の後ろの皮膚を切開する必要がありましたが、内視鏡下耳科手術では、皮膚切開が外耳道内になるため、傷の治りも早く、入院もかなり短期間になります(1~3日程度)。顕微鏡手術と内視鏡手術を組み合わせて手術を行うこともあります。

内視鏡下甲状腺・副甲状腺手術

甲状腺・副甲状腺は頸部(けいぶ)(首)の真ん中にある臓器です。従来は首の正面に5~8cmの皮膚切開を入れて摘出手術を行っていましたが、比較的目立つ場所に傷跡が残るため、術後の患者さんの生活の質(QOL)を下げる原因になっていました。甲状腺疾患は比較的若い女性(20~50歳)に多く、傷跡を気にされる方も少なくありません。2017年より良性甲状腺腫瘍(りょうせいこうじょうせんしゅよう)、バセドウ病、副甲状腺腺腫(ふくこうじょうせんせんしゅ)・過形成に、2019年より甲状腺悪性腫瘍に対して内視鏡下での手術が保険適用になりました。

良性甲状腺腫瘍は最大6cmまで、バセドウ病は通常の大きさ程度の甲状腺、甲状腺悪性腫瘍は甲状腺の外部に浸潤(しんじゅん)(腫瘍が周りに広がっていくこと)のない比較的早期の腫瘍が適応です。

内視鏡下手術の場合は、首の横側の5mm(内視鏡を入れる穴)と鎖骨下や耳後部に3cm(機材を出し入れする穴)の傷になるため、回復も早く、入院期間も短くなり、傷跡よるストレスも軽減されます。当院では、鎖骨下に3cmの皮膚切開を入れるVANS法を用いており、入院は5日程度です(写真2)。

写真2 内視鏡下甲状腺手術
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