ロボット支援手術の実績とメリット・デメリット

ロボット支援手術の実績とメリット・デメリット

泌尿器科における ロボット支援手術の進展

ロボット支援手術、特に「ダビンチ」はテレビなどでも耳にすることが多く、一般的な治療の1つとして認識されてきたのではないでしょうか? 現在では、胸腹部外科、頭頸部(とうけいぶ)外科、婦人科外科など、多くの専門科でロボット支援手術が行われています。その中でも幸運なことに、泌尿器科分野は日本でいち早くロボット支援手術の保険適用が認められました。

2012年には、ロボット支援下前立腺悪性腫瘍(あくせいしゅよう)手術が保険適用となり、当院でも2016年2月に手術支援ロボット(ダビンチサージカルシステム)を導入しました。それ以来、前立腺がんに対して2024年6月までに計313例の手術を施行しています。

さらに、ロボット支援手術の保険適用の拡大に伴い、2017年5月からは腎(じん)がんに対するロボット支援手術を開始し、計92例施行しました。2018年4月から膀胱がんロボット支援手術を計65例、2023年6月から腎盂尿管(じんうにょうかん)がんロボット支援手術を計10例、そして2024年1月からは良性疾患の腎盂尿管移行部狭窄症(きょうさくしょう)に対しても計2例のロボット支援手術を施行しています。

当院における ロボット支援手術の取り組み

図1 泌尿器科が扱う臓器

泌尿器科が取り扱う臓器には、副腎、腎臓、尿管、膀胱、前立腺があります。いずれの臓器も体の深いところにあり、開腹手術の時代には各臓器に到達するためには大きな切開が必要でした。しかし、術後の回復を考慮した小さな創(きず)で行える安全性の高い腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)が普及したことで、患者さんへの体の負担が軽減されました。さらに、より繊細な操作が求められる手術においては、ロボット支援手術が活躍しています。

現在、福井赤十字病院泌尿器科では5人の腹腔鏡技術認定医かつロボット支援手術認定医がロボット支援手術を担当しています。2023年度は80症例のロボット支援手術を施行しました。

ロボット支援手術は、開腹手術や腹腔鏡下手術と比べて合併症が少ないというメリットがあります。しかし、これはロボットが自動的に判断し、手術を完遂してくれるからではありません。ロボット支援手術はあくまで腹腔鏡下手術の延長上にあり、ロボットは術者の操作を支援してくれる手術道具の1つといえます。そのため、ロボットを的確に扱って手術をするためには、腹腔鏡下手術の経験や特別なトレーニングが不可欠です。

図2 ロボット支援手術数(2019〜2023年)

ロボット支援手術の特徴と課題

では、ロボットはどのような支援をしてくれるのでしょうか?

まず、ダビンチでは3次元立体画像を見ることができ、かつ、最大15倍まで拡大することで細かい血管や神経、筋組織を視認できます。カメラも術者自身で操作するため、腹腔鏡下手術で助手頼りになっていた視点の切り替えがスムーズになりました。また、カメラの角度は0度と30度を選択できるため、開腹手術で視野が制限され盲目的な操作となっていた状況が、ロボット支援手術ではほとんどなくなりました。視認できているからこそ、神経や血管の温存が可能となり、術中および術後の合併症の低下に有益です。

もう1つはロボットアームの多関節機能です。腹腔鏡で使用する鉗子(かんし)(ものをつかんだり挟んだりするための道具)やハサミなどは関節がないために、縦、横、前後、回転などの技術を駆使して操作を行う必要があります。しかし、ロボットの鉗子は可動域が広く、人間の手以上に関節が動くため、細かい縫合や剥離(はくり)・止血操作が可能となりました。

特に泌尿器科領域で扱う前立腺や膀胱などの臓器は骨盤の深くに存在し、周囲を骨盤骨で囲まれているため、非常に狭い空間での手術となります。また、腎がんに対する腎部分切除では、腎機能を温存するために腎臓の阻血(そけつ)時間(臓器の血流が止まってから、血流が再開するまでの時間)を短くする必要があります。そのため、止血縫合の早さが非常に重要なポイントですが、ロボットアームの使用により、あらゆる角度からの縫合が可能となり、従来の腹腔鏡での縫合から比べると格段に速くなりました。狭小空間での繊細な操作や時間制限がある状況での縫合には、特にロボットの有用性を実感しています。

しかし、ロボット支援手術にも弱点はあります。一番の弱点は触感がないことです。開腹手術や腹腔鏡下手術での鉗子操作は直接人の手で行うため、術野での硬度の感触が手に伝わりますが、ロボット支援手術ではそれがありません。私自身、現時点での対応としては、ロボットの鉗子が対象に触れたときの動きを視覚情報から読み取り、対象の硬さを判断するようにしていますが、これもいずれ改善されるものと思っています。

近い未来には、量子コンピュータの実現やAIの発達とともに、全自動で安全に手術が完遂される時代がくるかもしれません。それまでの間、私たちはより安全で合併症を少なくできるよう研鑽を積み続けます。

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