超音波内視鏡下穿刺による胆道ドレナージ術(EUS-BD)の実際
超音波内視鏡とは?
超音波内視鏡(EUS: Endoscopic Ultrasonography)とは、内視鏡の先端に超音波が備わった特別なカメラです(写真1)。「胃カメラ」と同じで口から挿入し、通常の内視鏡では見ることができない消化管の壁の構造や膵臓(すいぞう)(写真2左)、胆管(写真2右)、胆嚢(たんのう)、リンパ節などを超音波で詳しく観察することができます。
左:膵腫瘤/膵臓に存在する13mm大の腫瘤(自験例)
右:肝内胆管壁肥厚/肝臓内部の胆管の壁肥厚(自験例)
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の適応疾患
胆道は肝臓から十二指腸までの胆汁(たんじゅう)(肝臓で作られる消化液の1つで脂肪の消化を助ける働きや、体の不要な物質を排出する役割もあります)の通り道です。胆汁は肝臓で作られ、胆管(肝内・肝外)を通って腸へ流れます。(図1)。
胆管がんや膵臓がんなどが進行すると胆管が狭窄し、胆汁が流れない閉塞性黄疸*1(へいそくせいおうだん)の状態になります。そのまま放置していると、痛みの原因にもなり、さらに胆管炎という炎症を引き起こすことがあります。
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)とは、内視鏡を用いて超音波で胆管を確認しながら穿刺*2(せんし)し、消化管(胃や十二指腸)と胆管を直接つなぎ、胆汁をスムーズに流す治療の1つです。
従来、閉塞性黄疸の際には、側視鏡という特殊な内視鏡を使用し、「図1」のように十二指腸乳頭部(胆管と十二指腸のつなぎ目)から狭窄部位にステント(プラスチック製、もしくは金属の筒)を留置し、胆汁が流れる道を確保(ドレナージ)していました(経乳頭的)。
しかし、消化管の手術をされている方や腫瘍(しゅよう)によって消化管が狭窄している方の中には、通常の内視鏡では乳頭に到達できない場合があります。そうすると経乳頭的にドレナージができず、経皮的なドレナージ*3に頼らざるを得ませんでした。経皮的ドレナージ後の患者さんは外瘻(がいろう)(体内の臓器と体の外側をつなぐ人工的な通路)を常に体につけておく必要があり、QOL(生活の質)が著しく低下する問題が生じていました。
EUS-BDが開発されたことで、胃や十二指腸から胆管を穿刺し、ステントを留置することで、体外に管をつなぐことなく胆管閉塞の治療が可能になりました。
*1 黄疸:皮膚や白目が黄色くなる症状
*2 穿刺:針を刺すこと
*3 経皮的ドレナージ:皮膚の上から細い管(チューブ)を体内に入れて、たまった膿や余分な体液を外に出す治療法
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術の術式
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術にはステントを留置する場所によって、以下の3つの方法に分類されます。がんの部位などに応じて、適切な治療を選択します(図2)。
閉塞した胆管の流れを確保することで、黄疸の改善や胆管炎の予防・治療(細菌感染を防ぐ)、消化機能の改善(胆汁の流れが悪いと脂肪の消化が低下する)などの効果が期待されます。
また、患者さんへの体の負担が少ないというメリットがありますが、すべての患者さんに適応できるわけではありません。
1.胃-胆管瘻(EUS-HGS)
胃と肝内胆管をつなぐ管(ステント)を入れて、胆汁を流れやすくする手術
- 超音波内視鏡を口から入れて胃に挿入し、拡張した肝臓内の胆管を観察。穿刺ライン上に血管などがないことを確認する。
- 針を胆管に刺してワイヤーを胃まで通す。
- 穿刺した孔(あな)を拡張したうえで(しない場合もあります)、胃と胆管をつなぐためのステントを留置する。これで胃と胆管の間に流れる道ができる。
2.十二指腸-胆管瘻(EUS-CDS)
十二指腸と総胆管をつなぐ管(ステント)を入れて、胆汁を腸に流す手術
- 超音波内視鏡を口から入れて十二指腸に挿入し、拡張した総胆管を観察。穿刺ライン上に血管などがないことを確認する。
- 針を総胆管に刺してワイヤーを十二指腸まで通す。
- 穿刺した孔を拡張したうえで(しない場合もあります)、総胆管と十二指腸をつなぐための金属ステントを留置する。これで総胆管から十二指腸への道ができる。
3.胃-胆嚢瘻(EUS-GBD)
十二指腸と胆嚢をつなぐ管(ステント)を入れて、胆嚢の中の膿や胆汁を排出する手術
- 超音波内視鏡を口から入れて胃もしくは十二指腸に挿入し、腫大*4(しゅだい)した胆嚢を観察。穿刺ライン上に血管などがないことを確認。
- 針を胆嚢に刺してワイヤーを胆嚢内まで通す。
- 穿刺した孔を拡張したうえで(しない場合もあります)、金属ステントを十二指腸内に留置する。これで胆嚢から胃や十二指腸への道ができる。
*4 腫大:炎症などが原因で、組織や臓器・器官が腫れる(むくみ)こと
当院では2023年10月からこの治療法を導入し、現在までにEUS-HGS5例、EUS-CDS1例、計6例を施行していますが、いずれもドレナージ状態は良好です。



