脳卒中と闘う
24時間365日体制で挑むチーム医療
一次脳卒中センターコア施設として
脳卒中診療は、2018年に脳卒中・循環器病対策基本法が制定され、健康寿命の延伸のために全国的に整備されました。脳卒中は現在も寝たきりの原因の上位を占めており、地域の救急医療において重要な疾患です。
特に、脳梗塞(のうこうそく)超急性期における血管内治療による血栓回収療法が2015年に手技として確立され、条件が整えば従来は救えなかった患者さんに対して治療が可能となりました。これにより、急性期の脳卒中治療を行う施設の整備が全国的に進められています。
当院は、県内で2施設しかない一次脳卒中センターコア施設に認定されており、24時間365日体制で脳血栓回収療法が可能です。脳卒中の搬送件数は県内最多です。当院では、脳卒中指導医4人、脳血管内治療専門医3人(うち1人は指導医)を擁し、地域における脳卒中治療の中核病院として、今後も重要な役割を担っていきます。
ITを活用した院内連携と、AIによる診断を駆使した脳卒中治療
脳卒中は、大きく分けて出血性の脳出血やくも膜下出血(まくかしゅっけつ)と、虚血性の脳梗塞に分類されます。初期症状は共通することが多く、しかもできるだけ早い治療が必要なことから、まず正確に診断することが重要です。
当院では、Joinという医療用コミュニケーションアプリを活用して、受診した患者さんのCTやMRIなどの画像を脳卒中担当医師が、どこでもリアルタイムに閲覧できる体制を整えています。このシステムを24時間体制でチームの中で使用することで、迅速かつ的確で安全な治療を患者さんに提供することを目標としています。
脳梗塞急性期治療は、最近10年で最も進歩しており、特に内頸(ないけい)動脈や中大脳動脈などの比較的太い血管が詰まった場合、緊急の血管内治療によって血管を詰まらせている血栓を回収し、血流を再開通させることで症状を劇的に改善させることが可能になりました。ただし、脳梗塞になったときの脳の状態はさまざまで、すでに回復しない部分と回復する可能性がある部分があることがわかっています。回復が期待できない脳に対しては、再開通療法は効果がないだけではなく、逆に出血を引き起こして患者さんの状態を悪化させることもあります。
当院ではそれを見極めるために、2021年に北陸で初めて「RAPID」といわれる全自動脳画像解析ソフトウェアを導入しました。このソフトウェアは、まだ治療が可能だが血流が低下している脳の部分を自動的に算出する解析ソフトです。私たちはRAPIDを用いて、脳梗塞発症後24時間以内という制限の中でも、手術によって救える脳を検出し、積極的な治療を行っています。「救える命(脳)を救いたい」を合言葉に、脳卒中チームは日々の診療に取り組んでいます。
「外視鏡」(オーブアイ)
脳卒中急性期の最先端の治療を提供
脳卒中には、血管が閉塞(へいそく)する脳梗塞だけでなく、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の破裂によって起こるくも膜下出血や、脳の中の血管が破れる脳内出血があります。脳内出血に対しては、従来の開頭による脳内血腫(けっしゅ)除去術だけでなく、内視鏡を用いた体に負担の少ない低侵襲(ていしんしゅう)手術も症例に応じて行っています。
また、くも膜下出血は顕微鏡を用いた動脈瘤クリッピング手術に加えて、血管内治療をいつでも実施できる体制を整えています。それぞれの症例に対して、どの治療法が適切かをチームで十分に討論のうえで決定し、治療にあたっています。
血管内治療は近年非常に進歩しており、当院では脳血管内治療指導医を中心に、最先端のデバイス(コイルを支えるステントや血管を形作るフローダイバーターといわれるステント)を使用して、全国的にも最先端の治療を提供できるよう努めています。
北陸最大の脳卒中ケアユニットにおける集学的治療
脳卒中患者さんの24時間の受け入れ体制を維持するためには、脳神経センターがチームとして機能しなければなりません。脳卒中の治療にかかわるのは医師だけではなく、看護師、放射線技師、リハビリテーション技師、ソーシャルワーカーなど、さまざまな職種の専門家でチームを形成し、急性期についてはSCU(ストロークケアユニット)で治療を行います。
当院SCUは北陸最大規模となる12床を有し、年間400件以上の脳卒中患者さんを受け入れています。患者さんはこのSCUで、早期から多職種のチームによる評価と治療を始めます。脳卒中のガイドラインにおいても脳卒中の初期治療をチームを作って行うことにより、脳卒中の悪化や再発、肺炎などの感染症および死亡率が優位に低下し、在宅復帰率が上がり、長期的に見ても介護依存度が低く、自宅で生活している割合が高かったりすることが証明されています1)。
今後も福井赤十字病院脳神経センターは地域における超急性期脳卒中治療の中心として、開業医の先生や地域の回復期を支えている病院、在宅看護や介護で患者さんの生活を支えている方々と協力しながら、寝たきりを減らし健康寿命を延ばすよう、努力を続けていきます。
1) 脳卒中治療ガイドライン2021より



