腹腔鏡下手術とは…?

ここ最近、腹腔鏡下手術の社会的ニーズが高まっております。
一体、腹腔鏡下手術とはどういうものなのでしょうか?

腹腔鏡下手術について

まずは簡単に腹腔鏡について説明します。

腹腔鏡は内視鏡(筒状の小型カメラ)の一つです。【写真1,2】が実物です。その内視鏡をおなか(腹腔)に入れるため、腹腔鏡と言う名前が付いています。内視鏡を入れる先が変われば、名前も変わりますが、機械は同じ物を使用します。例えば、胸に入れて、肺の手術をする時は胸腔鏡(きょうくうきょう)下手術、膝の関節等で手術する時は関節鏡(かんせつきょう)下手術という名前になります。

【写真1】腹腔鏡本体(カメラ全体像)

【写真2】腹腔鏡先端部
(カメラそのものは5mmくらいの太さです)

では一体、その腹腔鏡下手術はどういうものなのでしょうか?
名前の通り、手術の一つの方法です。では、何か普通の手術と違いがあるのでしょうか?
理解して頂くためには、まず通常の手術の工程を説明します。

『一般的な手術(開腹手術:かいふくしゅじゅつ)の工程』

  1. 開腹(かいふく)
  2. 病変部確認(びょうへんぶかくにん)
  3. 栄養血管の確認
  4. 血管処理
  5. 病変部の摘出
  6. 止血確認(しけつかくにん)
  7. 閉腹(へいふく)

通常、まず手術は病気の部分(腫瘍等)を直接、目でみて確認します。確認するためには、病気の部分全体を見る必要がありますから、従来の一般的な開腹方法では病気の部分の大きさにもよりますが、婦人科では約10cm前後、おなかを切ります。

そして、病変部の確認を行いますが、病気とは言っても、人間の体の一部です。つまり生きてる組織の一部ですから栄養が必要であり、必ず栄養血管が病気の部分にも存在します。その血管を見極めます。そして血管を処理します(血管を2ヶ所、糸等で結び、その間を切断する。血管の端は糸で結ばれているため出血しない)。

そうすれば、病気の部分を出血させる事なく、取り出せます(摘出)。仮に病気の部分が10cm程の大きさであっても、おなかは10cm程、穴が開けてありますからそこから取り出せます。

そして病気の部分を取り出した後、残った正常部分に異常がないか、切断した血管の端から出血がないか等を確かめ(止血確認)、最後に最初に切った部分をまた糸で結んで(閉腹)、終了します。

腹腔鏡下手術と一般手術の違い

では腹腔鏡下手術だと、何がどう変わってくるのでしょうか?

当院では、まず臍(へそ)の底の部分を6~7mm切開し、その部分に腹腔鏡のカメラを入れます。そして、おなかの中を確認します。つまり病変部の確認のためにわざわざおなかを切る(開腹する)必要はありません。【写真3,4】

これは例えば、診断目的のみの検査「ごくまれに遭遇する診断が非常に難しい子宮外妊娠の特殊なケース・卵管の疎通性(卵管が詰まっていないかどうかの検査)の確認等」では事足ります。もちろん、手術終了時はその切開した部分を縫いますが、へその底の部分であるため、術後の傷あとは残りません。

【写真3】カメラ挿入前
(中央部分におへそが見えています)

【写真4】カメラ挿入後
(おへその部分にカメラが入った直後)

治療が必要な場合

【写真5】鉗子類(写真上が電気を使って、組織を切開するバイポーラー鉗子。写真下は持針器)

では次に、診断だけでなく、治療(摘出や切除等)が必要な場合はどうなるのでしょうか?

基本的には開腹手術と同じ工程が必要となります。血管の処理をするためにはそのために鉗子(かんし)や電気メス、レーザー、持針器(じしんき:おなかの中で糸を結ぶための機械)等が必要になります。【写真5】を御参照下さい。これらも全て、原則的には直径5mm以内の構造物であり、これらの操作のために、通常下腹部に1~3ヶ所程、6~7mm程度の傷が必要であり、そこから鉗子等の機械を入れて、手術操作をします。

これで例えば、慢性骨盤痛(まんせいこつばんつう)の治療や子宮内膜症等の癒着剥離(ゆちゃくはくり)、また子宮全摘術(子宮を全部取り出す手術)の場合、おなかの上での手術操作は終了となります。子宮全摘術の場合、腟側も切断されるため、おなかの傷は最小限となります。また、場合によっては、腟から(ダグラス窩というスペースを利用して)取り出す事も可能であり、子宮筋腫核出術(子宮筋腫だけを取り出し、子宮を残す手術)でも適応できます。

大きい腫瘍の場合

【写真6】4本全てが挿入された状態
(中央は大きい10mmのポートが挿入されています)

ではある程度の大きさの腫瘍の手術の場合はどうなるのでしょうか?

数cm大の腫瘍がある場合、まさか5mmの傷では取り出す事は出来ません。その場合は、残念ながら、10mm程の傷が出来ますが、そこから取り出します。筋腫の摘出も細かく砕くモレセレーターと言う機械を用いて取り出します。また、最近増加している卵巣腫瘍(卵巣の一部に水の様な物がたまっている病気)の場合は、その水を吸い出して、水が入っている風船をしぼます様にしながら腫瘍を皮(かわ)の様な部分だけにして、10mmの傷から摘出します。【写真6】をご参照下さい。

中には悪性の可能性が否定できないような場合もあります。その場合は、腫瘍を袋に入れて、中身がこぼれないようにしながら、摘出します。これも10mmの傷で可能です。

また若い方で、卵巣の腫瘍部分のみ摘出して、正常部分は残す事が大前提である場合も数多くあります。その場合は、20mm程の傷になる事もありますが、なるべく小さい傷で手術しております。

大体、以上の内容で腹腔鏡手術がされています。具体的な手術風景は【写真7,8】を御参照下さい。

【写真7】手術風景1(右上に術野[お腹の中]がモニターに映し出されています)

【写真8】手術風景2
(モニターが2個使用されています)

腹腔鏡手術の長所、短所

長所

  • お腹の傷が小さい。つまり、術後の痛みが少ない。術後の癒着の合併が少ない。
  • 全身状態の回復が早い。(術中に腸管が空気に触れず、術後の動きがいい。CRP低値)
  • 美容面で優れている。
  • 早期退院。早期社会復帰。

短所

  • 適応疾患が限られている。
  • 手術の難易度があがる。一部の合併症の頻度は上がる。
  • 手術時間が開腹手術よりも一般的には長い。

当院には、日本産婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医がおり、常に患者さんに有意義で、不利益のない手術を心掛けております。

また当院では、他の科でも腹腔鏡手術が盛んであり、外科・泌尿器科・呼吸器外科で多数の手術が行われております。

従いまして、病院全体として、内視鏡手術の総数が増加しており、その結果、スケールメリットを活かした最新鋭の手術器具が導入されております。

腹腔鏡手術の分野は、最も今、進歩が著しい分野でもあり、機械類にしても、毎年進化しております。歴史は浅い分野ですが、5年前と比べても、大きく手術方法が変化発展してきております。

また、王貞治監督の胃癌の手術でも適応され、一般的な手術方法としても認知されてきております。Minimally invasive surgery(低侵襲手術=手術の受ける患者さんにとって、負担が少ない手術)という表現がされていますが、婦人科領域では明らかな進行癌は適応できず、決して現段階では万能な手術ではありません。また合併症も少なからず、存在します。

腹腔鏡手術は、担当医から十分な説明を受けて御納得を頂いてから、実施しております。御検討中の方は、一度外来を受診してください。