難治性ネフローゼ症候群に対する免疫抑制療法

難治性ネフローゼ症候群に対する免疫抑制療法

小児ネフローゼ症候群とは

ネフローゼ症候群(しょうこうぐん)とは、尿中に大量の蛋白(たんぱく)が漏れ出ることで、血液中の蛋白(アルブミン)が少なくなり、その結果として体がむくむ病気です。日本では小児人口10万人当たり6.5人に生じ、その頻度は欧米と比較して約3倍程度高いとされています。

原因は未だ不明ですが、近年、老廃物(ろうはいぶつ)をろ過する腎臓(じんぞう)の中で、フィルター役として働く糸球体という構造物を構成する「ネフリン」と呼ばれる蛋白が、何らかの免疫異常により傷害を受けることで発症する可能性が高いことがわかってきました。ただし、そのほかにも遺伝子異常など複数の因子が関与して発症に至ると考えられています。

ネフローゼ症候群は多くの場合、まぶたや足がむくむといった症状で気づかれます(図)。むくみが強くなればお腹(なか)や胸にも水が溜(た)まり、体重が急激に増加したり、腹痛や呼吸苦(こきゅうく)が生じたりすることもあります。また、男児では陰嚢(いんのう)がむくむこともあります。血管の外に大量の水分が漏れ出てしまうことにより血管内の水分は少なくなり、その結果として尿量が低下することが多く、一部では腎機能障害を呈することもあります。このほか、血が固まりやすくなることで血栓が肺の血管を詰(つ)まらせたり、免疫機能が低下し、重い感染症にかかったりする危険性もあります。

ネフローゼ症候群を発症したとき、成人では多くの場合腎生検(じんせいけん)を行い、詳しい病型の診断を行います。一方小児では、腎生検を行っても一見しただけでは正常像と見分けのつかない「微小変化型(びしょうへんかがた)」と呼ばれる像を呈する場合が多いため、大半は腎生検を行わずに治療を開始します。ただし、肉眼的血尿が見られる場合や腎機能障害が強い場合、あるいは次項に挙げる初期治療が効きにくい場合などは微小変化型ではない可能性も含まれるため、適宜腎生検を行います。

図 難治性ネフローゼ症候群の主な症状

ネフローゼ症候群の治療

小児ネフローゼ症候群に対しては、一般的にステロイド薬が使用されます。ステロイド薬は炎症を抑えたり、免疫の働きを弱めたりする作用があり、ネフローゼ症候群に限らずさまざまな病気の治療に使用されます。

小児ネフローゼ症候群の多く(80~90%)はステロイド薬に対して良好な反応を示し、比較的速やかに蛋白尿が消失することが多いですが、一方で8割近くの患者さんが再発するといった特徴があります。

そのため、ステロイド薬の投与期間が長期化したり、総投与量が多くなったりすることで、さまざまなステロイド薬の副作用に悩まされることも少なくありません。「表」に挙げるものは一部であり、実際にはほかにも多くの副作用が生じる可能性があります。

表 ステロイド薬の副作用

とりわけ小児期においては、身長の伸びが滞る成長障害が重要な副作用として挙げられます。そのため、小児ネフローゼ症候群の治療に際しては、ステロイド薬の副作用をいかに最小限に抑えるかといった配慮が重要となります。

ネフローゼ症候群に対する 免疫抑制療法

再発を繰り返したり、ステロイド薬がなかなか中止できないケースを、それぞれ「頻回再発型」「ステロイド依存性」ネフローゼ症候群と呼びますが、小児ネフローゼ症候群の約40%がこのケースに当てはまります。

年齢が上がるにつれて再発の頻度は減少し、再発時の重症度も軽減する場合が多いですが、再発を繰り返しながら成人期に移行するケースも30%程度でみられます。

近年では、ステロイド薬の副作用を最小限に抑えるため、多くの免疫抑制薬が健康保険の適用を受け、使用できるようになりました。飲み薬では、リンパ球に作用し免疫反応を抑えるシクロスポリンやミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチルといった薬剤が使用されます。また、注射薬ではリンパ球の一種であるB細胞に作用するリツキシマブが使用されることがあります。

これは元来、リンパ腫(しゅ)の治療として使われていましたが、ネフローゼ症候群にも効果があることがわかりました。各薬剤に共通する副作用は免疫機能の低下ですが、それぞれの薬剤に特徴的な副作用もあり、導入時は必要に応じて入院し、薬剤によっては定期的に血中濃度を測定するなど、注意深くその効果や副作用について観察を行う必要があります。

しかしながら、これらの薬剤の登場により、ステロイド薬による重大な副作用を回避できる可能性が飛躍的に高まったと考えられます。小児ネフローゼ症候群に限らず、一昔前までは長期入院や厳しい食事・運動制限が必要とされていた小児の慢性腎臓病の治療は大きく変化したと言えるでしょう。

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