お知らせ令和8年9月6日市民公開講座「腎臓を守ることは、人生を守ること~ 腎臓がん+慢性腎不全の最新知識~」開催報告を掲載しました

福井赤十字病院の市民公開講座「腎臓を守ることは、人生を守ること~腎臓がん+慢性腎不全の最新知識~」が9月6日、福井赤十字病院で開催されました。約200名が参加し、腎臓がんの先進的な手術や薬物療法、
がん相談支援センターの役割、慢性腎不全の治療法や食事療法などについて理解を深めました。
■内容
腎臓が悪いと言われて受診されたとき、腎臓内科医が考えていること
最近の腎臓がんの治療の進歩について
がん診療センター・腎センター 角野佳史 センター長
負担を軽く、効果を大きく進化する手術と薬物療法
腎臓には、ネフロンという尿をつくる工場があります。動脈から入った血液はネフロンの中の糸球体でろ過され、静脈に戻る血液と尿に分けられます。腎臓がんの多くはこの工場部分に発生し、かなり進行しないと症状が現れないため、検診などで見つかるケースが大半です。大きさや浸潤状況によりステージ1~4に分類され、ステージ3までは手術で完治することも多いですが、ステージ4の転移がんは、手術、薬物療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療が必要です。
かつては、手術で片方の腎臓を全摘することも多かったのですが、最近は、腎臓機能の維持が長期生存に重要といわれ、腫瘍が小さい場合は、可能な限り部分切除が選択されます。
30年ほど前には、傷が小さく、患者さんの負担が軽い腹腔鏡手術が行われるようになりました。しかし、鉗子を付けて体内に挿入する器具が直線状で、操作しにくいのが難点で した。これを解決したのが、術者が遠隔操作するロボット支援手術です 。アーム3本に鉗子、もう1本に3Dカメラを付けます。アームの関節が動くため操作の自由度が高く、高解像度の画像観察下に、精密な手術ができます。
進行腎臓がんに対する薬物療法も進化しています。2000年代には血管を増やす信号を出す分子の働きを抑え、がん細胞に流れる血液を減らして死滅させる分子標的薬が開発されました。がんのバリアを破り、患者さん自身の免疫力を覚醒させる免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法も登場しています。現在は、この2つを組み合わせるコンビネーション治療が最も効果的といわれています。さらに、がんの性質を調べる研究と、特質に合わせた薬の開発も進み、進行腎臓がんであっても長生きできる可能性が以前より高くなっています。
がんの早期発見、早期治療には、やはり検診が非常に大切です。治療に当たっては主治医と相談を重ね、自分にはどの治療が適切なのかを、十分考えた上で決めていただくようお願いします。
身近で安心!がん相談支援センターの上手な使い方
認定がん専門相談員 吉川朋子 看護師
治療から暮らしまでさまざまな不安や悩みに対応
「がん相談支援センター」は 、質の高いがん医療を行う「がん診療連携拠点病院」などに設置される相談窓口です。全国に約470カ所、福井県内には当院を含む5カ所に設けられています。がんが疑われる段階から治療後まで時期を問わず無料で利用でき、匿名でも構いません。その患者さんに合った治療や生活方法を選択できるように、相談員が科学的根拠に基づく情報の提供や支援を行います。2025年度に当センターへ寄せられた相談は、症状や治療法に関する内容が多く、次いで不安や精神的苦痛、医療費や生活費などでした。告知直後で病気と生活の心配を訴える方には、まずお話をお聞きし、今できることをお伝えします。また、手術後の抗がん剤投与など治療法に迷っている方には、がん情報サービスや治療ガイドラインなどを参考に情報提供し、主治医との話し合いをおすすめします。ご相談の際は、聞きたいことを書いたメモや入手した資料をお持ちいただくと、疑問や不安が解決しやすいです。現在、看護師 4名、公認心理師 1名、社会福祉士 1名が相談員として対応に当たっておりますので、いつでも気軽にお越しください。
腎臓が悪いと言われて受診されたとき、腎臓内科医が考えていること
腎臓・泌尿器科 鈴木康倫 部長
個々の病状や環境に合わせた治療や代替療法を
慢性腎臓病(CKD=chronic kidneydisease)の患者は約2,000万人に上り、新たな国民病といわれます。かなり進行するまで無症状のため、発見が遅れて透析が必要になることもあり、心筋梗塞や脳卒中など心血管病のリスクも高まります。しかし、検尿や血液検査で見つけることが可能で、早期発見、早期治療が有効です。CKDは、タンパク尿が出る、あるいは血液検査でわかるeGFRの数値が60未満という異常が3カ月を超えて続く場合に診断されます。
先述のように患者数が多く、治療にはかかりつけ医の協力が欠かせません。かかりつけ医から専門医の治療へ移行する紹介基準が定められていますが、数値や期間などから総合的に判断する必要があります。腎臓学会が提唱するeGFRの基準は遅くとも45以下ですが、50の患者さんでも数年間下がり続けている場合は注意が必要です。タンパク尿もプラスマ イナスだけでなく、何g出ているかが重要です。
専門医は、腎臓に異常をもたらした原因と現状を探り、進行を遅らせるための治療法を考えます。腎臓を守るSGLT2 阻害薬なども使用できますが、CKDは患者さんによって原因も病状も異なるため、血圧や血糖、尿酸、脂質などの管理、食事を含めた生活習慣の改善といったきめ細かい対応が必要です。
悪化した場合は、腎代替療法の透析や腎移植を検討します。透析は週3回通院し、血液を機械に通して水や老廃物を取り除く血液透析と、「おうち透析」と呼ばれる、お腹に装着したチューブに透析液を注入し毎日交換する腹膜透析があります。日本は諸外国に比べ血液透析の割合が9割と高く、患者さんが「それなら自分も」と決めている可能性も考えられます。CKDは一人一人の病状や生活状況に合わせた治療が重要な個別性の高い病気です。特に腎代替療法の選択は、生き方を選ぶ人生の大きな決断です。ご希望をお聞きし、看護師や管理栄養士など他の職種のスタッフと連携しながら最善の治療を一緒に考えていきたいと思います。
慢性腎臓病SDGs(持続可能な腎臓食事療法)
栄養課係長 小川初実 管理栄養士
自分の食事のクセを知り食べ方を工夫する
慢性腎臓病の進行を抑えるための食事療法では、我慢し過ぎず、自分に合ったやり方を継続することが大切です。
ポイントの一つが栄養バランスです。食事内容は人によって異なり「 ごはんと肉は多め、野菜は少し」などのクセがあります。クセをなくすつもりで、エネルギーの元になる炭水化物、体をつくるタンパク質、体
の調子を整えるビタミン・ミネラルの3種類を毎食摂ることを心がけます。
二つ目は適正な塩分摂取です。腎臓の機能を低下させる高血圧や尿タンパクの抑制のために推奨されている塩分量は1日 6g 未満ですが、令和4年度県民健康栄養調査によると福井県民は、男性が11.9g、女性が9.9g 摂っています。これを6g に近づけることが大切です。塩分の多いものを食べ過ぎない、しょうゆなどの調味料を控え、薬味や香辛料を活用するなどの工夫が必要です。少し面倒ですが、調味料は計量スプーンで量り、レシピの分量から1~2割減らすことも有効です。ご自身に合った食事療法を探し、続けてみてください。
令和8年10月10日付 福井新聞掲載記事

お問合せ窓口
福井赤十字病院 事務部 総務課 TEL 0776-36-3630(代表)



